友人の新たな一歩

 

「地に足がつく」という言葉があって、僕の好きな言葉でもあるのですが、この言葉って考えてみると不思議だなと思います。人間は二本足で、どう考えても地に足をつけて暮らしていく生き物なのに、その当たり前のことを、わざわざ思い返すための言葉のような印象を受けます。

 

思えば人間は(特に男は)高いところへ、大きいものへ向かっていく習性があるのではないかと思われます。

空を飛んだり、高いビルを立てたり。時代は進化するということを疑いもなく信じ、突き進む。

それはバベルの塔の時代から変わっていないのかも知れません。

石を積み上げて、見晴らしの良い景色を求めて、飽くことがない。

そして、最後には神様から手痛い戒めを受ける。

 

21世紀になっても、やっぱり人間は高いものが好きで、大きなものが好きです。

だから、やたら高いタワーを作るし、やたらでかい建物をつくろうとする。

人間は宙に浮いたまま生きることは出来ないのに。

 

だからこそ、という訳ではないかも知れませんが、「あっこの人、地に足つけてがんばってるな」と思う人と出会うととても嬉しくなります。

 

そして、それが友人であればなおのことです。

 

大学時代、とても仲が良かった東北出身の僕の友人は、誰もが聞いたことがあるような大手マスコミで働いたのち、思うことがあり、このたび退職し、現在福島県に移住し、自分なりの新しいメディアを立ち上げようとがんばっています。

 

彼がいま発信しているメディアは「さばみそ通信」という小さなホームページです。

なぜ「さばみそ通信」という名前かという命名に関して、彼が説明している文章がとても魅力的ですのでご紹介したいと思います。

 

少々引用します。

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さばみそ通信について

さばみそ通信は福島県いわき市に突如として現れた弱小通信社です。編集長も社長もいません。記者が一人でやっています。主に福島発のものを中心に、さばみそを作るくらいの手間をかけて書いていきます。

 取材をして記事を書くことは、料理に似ています。材料を集め、細かく刻んだり、一緒に煮込んでみたり、あるいは少しスパイスを効かせてみたり……。お客さんが食べられるようにして提供します。きれいな盛りつけも必要です。なので、ある程度の手間はかかります。

 この点、大手メディアはすごい。コックやシェフがいて、多くの見習い料理人がいて、馬鹿でかいオーブンやら冷蔵庫やらがあります。料理人にはそれぞれの持ち場があり、一日中野菜を切り続ける人や天ぷらばかり揚げる人、献立を考え続けている人なんかがいて、昼夜の別なく料理を提供し続けています。

 我が方はというと、簡単な鍋と包丁、ごくごく平凡な男がひとりいるだけです。食材集めから仕込み、調理から盛りつけにいたるまで、一人でやります。食材は目の届く範囲のもの。調理は自己流で味見をしながら。盛りつけはできる限りていねいに。

 コンビニ弁当のような記事ではなく、自分なりの味がでるような記事を心がけていきます。

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この文章を読んで、ああ、こんな友人をもって僕は幸せだなあと思いました。

 

高いところからではなく、大きなものとしてではなく、「さばみそ」を作る主夫のような気持ちで

彼は福島から、原子力に依存するこの国と向かいあおうとしている。

見たくもない現実やどうしようもない気持ちもあるかもしれないけれど。

僕には到底出来ない、とても勇気のいる覚悟を持って、彼は一人でがんばっているんだな。

 

こういう、地域に生きる人の強さを、大きな立場にいる人間はもっと分かってほしいなーと思います。

 

これからの「さばみそ通信」の成長が楽しみです。

 

応援してるよ!木田くん!

 

 

 

とまり木  http://10marigi.info/

 

(↑2017年さばみそ通信あらため、”とまり木"と題してホームページを開設してます。)